本の紹介

「暗号通貨 vs 国家 ビットコインは終わらない」を読んで

今日ご紹介する本は、「暗号通貨 vs 国家 ビットコインは終わらない」です。

「暗号通貨 vs 国家 ビットコインは終わらない」
SBクリエイティブ
坂井豊貴 著
初版 2019年2月15日

※この本では仮想通貨(暗号資産)」ではなく、「暗号通貨」という用語を使用しているので、今回のブログでは「暗号通貨」を使用します。

 

暗号通貨バブル後の価格低迷、度重なるコイン流出事件などで、「暗号通貨の時代は終わり?」といった意見もちらほらあるようですが、この本の副題の「ビットコインは終わらない」という言葉に象徴されるように、終わるどころか「始まったばかりだ」と作者は力強く書いています。

作者は、この本を通じて「暗号通貨の面白さって、いまだに世の中には広まっていない。-一部略- なぜあんなわけのわからないものに多大な情熱が注がれているのか。それこそがポイントだ。設計の奥深さ、込められた理想、そして現状」を伝えたいといいます。

私がこの本を特に面白いと感じたのは、設計、理想、現状を説明するうえで、暗号通貨にかかわる人々の思考や人間ドラマにスポットを当てていること。

たとえば、ビットコインのブロックチェーンを説明する章。ブロックチェーンの基本的な説明もあるのですが、他と異なるのは、ブロックづくりの競争に負けたマイナーの立場に立って説明していることです。今回は負けたけど、今どういう行動をすれば、次にうまくいくかという視点から、ブロックチェーンがなぜ分岐しないのかが説明されています。自分がマイナーだったら確かにそう行動すると思えるので、分岐しない理由をすんなりと理解できました。

ビットコインはスケーラビリティの問題から、最終的にビットコインとビットコインキャッシュに分裂するのですが、そこに至るまでに、様々な解決策が出ては消え、他にも分裂騒ぎがあったことを、この本で初めて知りました。それらを事実として並べるのではなく、開発者、マイナーがどう思って、どう行動したのか、なぜ分裂を支持したのか、またはなぜ従来の方法にこだわったのかなどが具体的に書かれています。繰り広げられる人間模様は、普段私たちが経験するものとあまり変わらないような気がして、なんだか親しみを感じてしまいました。

ただ、問題を早く解決する必要がある時は、やはり管理する組織やルールがあったほうがいいかも、集団を束ねるトップがいないと、こんなとき面倒だな~とも感じてしまいました。

それでも、確固たるルールや強制がない中で、たとえ分裂という形になっても、その基本となる仕組みもコミュニティも維持されているのは、やはりすごいことです。

そして、イーサリアム分裂の経緯を説明する章を読んで、コミュニティ内で問題解決するのも悪くないと思えるようになりました。
イーサの流出に端を発して、イーサリアムとイーサリアムクラシックに分裂するのですが、作者はこの分裂をただの分裂とはとらえていません。コミュニティに参加する人々や開発者が自分の好むほうに参加できる、選択権があることを高く評価しています。

私にとって最も印象的だったのは、
「世界で共通の通貨があれば便利である。ビットコインにそれが期待されることもある。だが、ビットコインが切り開いたのは、むしろ各自が好む通貨を自由に選び取れる世界だ」という文章です。

通貨を選べる時代が来るかもしれないなんて、暗号通貨を知るまでは思ったこともありませんでした。というよりそもそも通貨を選ぶという感覚が皆無でした。支払い方法は確かに多様になりましたが、通貨そのものは、日本で使う場合は「円」、海外に行けばその国の通貨だと思い込んでいました。

しかし、用途や好みによってお店を選ぶように、そのサービスに一番合った通貨を選ぶ、そんな時代がもうそこまで来ているんだなと思いました。