本の紹介

「キャッシュレス覇権戦争」を読んで

今回ご紹介するのは、「キャッシュレス覇権戦争」です。

「キャッシュレス覇権戦争」
NHK出版
岩田昭男 著
初版 2019年2月10日

 

 

 

少し前から、国を挙げてのキャッシュレス決済推進が始まっていますが、消費税アップを目前に控えて、キャッシュレス決済、特にQR決済が一層身近に感じられるようになりました。商店街を歩いていると、〇〇Pay使えます~というのぼりやお知らせをよく目にします。

私もキャッシュレス決済を多用しています。といっても、使用しているのは主に電子マネー。クレジットカードも、以前から時々使っていましたが、交通系、流通系の電子マネーが登場してからは、普段の生活での支払いは電子マネーに頼ることがめっきり増えました。

電子マネーを使った感想は、とにかく「便利」の一言に尽きます。お財布の中身をごそごそ確認しなくていいし、小銭が足りるかしらと気にする必要もない。機械にかざして「ピッ!」で終了。以前のように何もかも現金で支払う形態にはもう戻れないと感じています。

QRコード決済は、クレジットカードや電子マネーのように専用の機器も必要なく、手数料も高くないので一般のお店にも導入しやすいと聞いています。今後はこの決済が主流になると予想されるので、どこのサービスを使おうか検討しなくてはと思っていました。

しかし、その一方で、消費内容が何もかもデータ化され、企業に管理されるのはどうなのだろうという漠然とした不安も感じていました。キャッシュレス決済の流れは止められないと思いますが、利用するうえで何に注意すればいいのか、そんなことを知りたくて、この本を手に取りました。

本の前半では、日本、アメリカ、中国のキャッシュレス決済の現状が詳しく紹介されています。中でも、アメリカでクレジットカードがどのように生まれ、社会に深く根付いていったのかはとても面白かったです。

後半は、一転して、信用スコアという個人情報の問題が取り上げられています。アメリカではクレジット決済から得られるクレジットスコア、中国では主にQRコード決済によって得られるゴマ信用という信用スコアが、個人の生活にいかに深くかかわるようになったのかを詳しくレポートしています。

本によると
クレジットスコア
具体的には、過去のカードの使用履歴を精査することによって、返済履歴や借入残高や新規借入の有無、クレジットカードの種類などを点数化していくもの

ゴマ信用
返済履歴や買い物履歴だけではなく、個人の生活情報(暮らしぶり)も取り込んでAI(人工知能)によって点数化した。ゴマ信用は、いわば従来のクレジットスコアと各種の個人情報が合体したサービス

とのことです。

このスコアの点数が高いと様々なインセンティブが与えられ、社会で暮らしやすくなり、反対に点数が低いと、暮らしにくくなるというのです。

自分の消費を含めた様々な行動が点数化され、評価され、それが暮らしに跳ね返ってくる、、、学生の時、内申書が受験に関わることを意識するだけでも息苦しかったのに、毎日の生活がスコアに影響して、それがずっと続くなんて、いつも誰かに見られているような気がしてしまうのではないかしら。。。なにより、格差があらゆるところではっきりと目に見える形で存在し、何かサービスを受けるたびにそれを意識せざるをえない状況は、人々にどんな影響を与えるのだろうと考えてしまいました。

日本でも、このようなスコアのサービスが始まっているそうです。今後、キャッシュレス決済が広まるにつれ、似たようなスコアが作成され、スコアに応じたサービスが生まれるかもしれません。

本では、個人情報を一手に握るGAFAについても言及しています。世界中の人たちの情報を管理し、それを利用して、莫大な利益を上げる巨大企業。利益を上げるだけでなく、政治を左右したり、情報管理の甘さから個人情報の流出事件を起こしたり、と様々な問題も起きています。

これからどうなるんだろうという不安ばかりが先行しますが、個人情報を守る動き、例えばGAFAに対抗するためにEUが制定した法律や、個人情報を正しく使うための情報銀行設立の検討が日本で行われていることも、併せて紹介されていて、少しホッとしました。

始まったサービスの流れは、上にも書いたように止められないものだと思います。その中で、個人ができることってなんでしょう。

作者は、自分の情報は自分で守る時代だといいます。

日本で、今後どのように個人情報が守られていくのかについてアンテナを張っていこうと思います。企業が、個人情報を正しく利用して利益を上げることもとても大切だとは思いますが、ただ利用するだけなら、やはりノーといいたいです。ルールを守り、プライバシーを侵害しないで、個人にも得になるような、Win-Winの視点でうまく活用してほしいと思います。そのために自分にできることは何かを考えながら、新しい決済方法と付き合っていきたいと思いました。